Twitterや5chをのぞけば罵詈雑言、誹謗中傷だらけだ。
「無能」「死ね」という何も面白くない言葉ばかりで、見ているこちらは不愉快でつまらない。
「つまらないなら見なければいいだろ、キモっ」と今も書き込まれたに違いない。
ザック・セイバーJr.も暴言は多い。
しかし、ザックの場合ただ口が悪いだけではない。そこにはユーモアやワードセンスが溢れんばかりに盛り込まれている。ザックの暴言には知性と芸術性がある。ザックの暴言集が発売されたら、現代のシャルル・ボードレールとなるに違いない。
暴言にユーモアが入ることで、エンターテイメントになり人を楽しませるようになるのだ。インターネットが不可欠な時代の今こそ、人類はザックの暴言から学ぶべきことがある。
内藤への暴言まとめ
ザック・セイバーJr.は、とにかく内藤哲也が嫌いだ。
内藤との試合があったときのバックステージコメントは、暴言の宝石箱だ。暴言のIT革命だ。
ザックの内藤哲也への暴言から、暴言の真髄を学んでみよう。
内藤への暴言①
マイニチ、ナイトーシアイ。マイニチクソナイトーだ!
このコメントは、内藤哲也と前哨戦で連日試合が組まれていたときのバックステージコメントである。ザック暴言の素晴らしいところは、英語だけではなく日本語でも罵倒を伝えてくれる点である。
ただ単純に罵倒したいなら英語でいい。
でも、ザックは聞いている人が理解しやすように、相手の母国語で暴言を伝える。そこには聞いている人への配慮があり、ジェントルマンな態度を感じることができる。暴言とは聞く人を想って吐くべきなのだ。暴言は優しさなのである。
また「クソナイトー」というシンプルなパワーワードが、力強く聞くものの心を打つ。
内藤への暴言②
ナイトーの顔を叩き潰したり、腕を折るのはタノシイ
完全なサイコパスである。
しかし、こちらの暴言も聞いていても全く不愉快に思わない。なぜだろうか?
それは相手を悪く言うのではなく、自分が楽しいと思うことに転換して言っているからなのだ。ポジティブな暴言なのだ。
「ぶっつぶしてやる!」ではなく、「ぶっつぶすのが楽しい」と言い換えることで、怒りの呪縛から解放され、メンタルにもいい状態になり、たぶん癌予防にもつながる。これは日常生活でも有効だ。
嫌なヤツがいたら「マジでウザい、消えろ」と言うのではなく、「アイツがサロマ湖に消えることを想像すると楽しい」と言い換えることで、ポジティブに生きていける。
内藤への暴言③
内藤の皮を剥いで、それでスーツを作って俺が着る
完全にハンニバル博士である。
こちらの暴言もユーモアがあって、不愉快に感じることがない。なぜなら「皮を剥ぐ」という暴力的でサイコパスな行為で終わらせるのではなく、「スーツを作って俺が着る」という実用的な行為へ昇華させているからである。そして、ECOでもある。SDGsかもしれない。リユースだ。
ただの暴力で終わらせない。ヴィーガンであるザックは、暴言によって環境への問題提起しているのだ。
「お前をぶん殴ってやる!」と言うのではただの暴力だ。暴力はよくない。しかし、「お前をぶん殴った力を利用して電力に変えて節電してやる!」と言うことで、暴力が世界を救うようになるのだ。
内藤への暴言④
あのバカ野郎のせいで耳がもげるかと思った
このコメントは、内藤哲也に執拗に耳を引っ張られた試合後に発せられた。
普通のレスラーであれば「痛ぇだろうがっ、ふざけるんじゃねー」と言ってしまうところを、ザックは「耳がもげる」という具体的な表現で、痛みの強さを伝えてくれている。
あなたは耳がもげたことがあるだろうか? 私はない。
実際に人類で耳がもげたのは、耳なし芳一か、マイク・タイソンの対戦相手しかいない。耳がもげる痛みは体験したことはない。しかし、その痛みは想像ができる。
相手が想像できる最大限の痛みを、瞬時に表現して伝えてくる。
それがザック「暴言の詩人」の表現力である。
ふと思ったけど「耳なし芳一」ってタイトルでネタバレしているよね。
内藤への暴言⑤
内藤の耳を引きちぎって売って、稼いだ金を寄付する
ザックの暴言は、暴力で終わらない、とは前述に書いた通りだ。
ザックは耳を引きちぎるだけじゃ終わらないのだ。
売って、稼いで、寄付をする。ザックはビジネスモデルの展開まで視野に入っている。自らの怒りや憎しみによって生まれた暴力を、ビジネスで展開し、恵まれない人々へ寄付していく。ザックの暴言にはビジョンがあるのだ。
人間は暴力を止めることはできない。ならば、暴力を使って寄付をすればいいではないか。撲滅できないなら、利用すればいいじゃないかという、発想の転換。それがザックという男だ。
ザックの暴言は、感情に任せたものではなく、世界平和への提言になっているのである。
その他の暴言
その他のザックの暴言もいくつか紹介したいと思う。
最後にやった時は鼻を破壊してやった。でも今度は頭を破壊すれば、奇跡が起きて少しはオマエの空っぽの頭もマシになるかもしれないな
EVIL!パンプキン頭が!
ドクター! ドクター! 腎臓が飛び出した! どこに行ったかわからない。ドクター…!
ムカつくから残りの出場選手全員が食中毒か下痢にでもなって苦しめばいい
どうだろうか? ザックの暴言を並べていて気付いたことがある。ザックの暴言は、肉体的な表現が多いのだ。「頭を破壊する」「腎臓」「下痢」「パンプキン頭」。
これは「ムカつく」という<感情>を「体のどこかをぶっ壊す」と<行動>に置きかえているのだ。ザックは、感情をぶつけるのではなく、行動せよと言っているのである。
人生にはムカつくこと、つい誹謗中傷をしたいことが山ほどある。
私も仕事上で腹が立つことが山ほどある。そんなときは裏垢で「ムカつく。消えろ」なんて芸のない書き込みはやめて、「低空ドロップキックからの足4の字固めしてやる」と書き込んでやろう。
暴言にはユーモアが必要だ。
まとめ
- 暴言は聞いている人への優しさが必要
- 暴言はポジティブに言い換える
- 暴力でも世界は平和になる
- 感情に支配されるな。行動せよ。