スゴくてへんな生き物〜オカダ・カズチカ編〜

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ここがスゴイよ、オカダ・カズチカ

オカダ・カズチカはフィジカルがスゴい。

191cmという日本人離れした肉体を持ちながら、凄まじいジャンプ力でドロップキックをぶっ放す。なんならトップロープからミサイルキックをぶっ放す。3m以上の高さから顔面にキックを打ち付ける。喰らった相手はたまったもんじゃない。

10cmのヒールを履いた大林素子が、吹き抜けから落ちてぶつかってくるの想像してもらえればわかりやすい。玄関を空けたら吹き抜けから大林素子だ。ものすごい衝撃だ。なぜ大林素子がっ!という衝撃がすごい。

オカダ・カズチカはスタミナもスゴい。

アメリカ巡業時代に1日1万カロリー摂取していたからか、60分フルタイムで決着がつかないことがある。25分過ぎてから何故か体力が回復してくる。恐らく自動回復スキルを持っているに違いない。ボストロールと同じ仕組みだ。試合が長引くほどオカダが有利になる。

相手の必殺技を一通り全部食らっているのに、叫びながら立ち上がってくる。人間よりもターミネーターに近い。もしくは『太陽を盗んだ男』の菅原文太かもしれない。だぶんみんな知らないと思うけど。

とにかくオカダ・カズチカとスティーブン・セガールには勝てる気がしない。絶望的な強さを感じる。

ここがヘンだよ、オカダ・カズチカ

オカダ・カズチカは突然ヘンなことを言い出す。
唐突に何かを提案したり、撤廃する。それまでの経緯やルールなど平気ですっ飛ばす。

コロナ禍でオカダは『KOPW』というタイトルを突然提案した。

かと思うと、矢野通に丸め込まれてあっさり敗退。それ以来、すべての興味をなくしてしまったのか、一度も『KOPW』というワードを発していない。2022年には鷹木信悟がケツを持って、一生懸命『KOPW』のトロフィーを手作りしている。なんのためのタイトルだったのか謎のままである。
(※結局、鷹木信悟はブチ切れてKOPW引退すると宣言。2022年12月)

2021年、オカダ・カズチカがG1に優勝した時も、突然の提案があった。

当時は封印されていたIWGPヘビー級のベルトをくれと言い出したのだ。本来であれば、G1優勝者が、そのときのIWGP世界ヘビー級チャンピオンに挑戦する権利を得ることになる。しかし、オカダは「向こうでしょ? 挑戦するのは。どっちがチャンピオンだと思っているの?」とチャンピオンの概念を覆してしまう。当然、IWGP世界ヘビーのチャンピオンは「ふざけるな」怒り心頭だ。またもや鷹木信悟だ。いつも鷹木信悟がケツを持ってくれる。

さらに翌年の2022年にオカダ・カズチカがG1を2連覇したときも提案があった。

10年間続いた「IWGP挑戦権利証」を撤廃したのである。「G1の価値ってそんなもんじゃないでしょ」と権利書の存在を否定。そもそも10年前にオカダがきっかけで作られた「IWGP挑戦権利証」だったが、必要がなくなったら撤廃する。自分きっかけとかそんな小さいことは気にしない。いらなくなったら断捨離だ。

オーナーに対してもはっきりと「クソオーナー」と言う。あなたは自社の社長に「クソ社長」と言えるだろうか? 社会人としてそんなことは言ってはいけない。そういう突然ヘンに生意気なところにオカダ・カズチカの魅力がある。

個人的にいちばん気になるオカダ・カズチカのヘンなところは、入場時である。

入場時にコーナーに登り、観客に向かって何かをぶつぶつとつぶやいているのだ。叫ぶでもなく、盛り上げるでもなく、何かをモゴモゴと言っている。全然、聞こえない。でも、確実になんかモゴモゴと言っている。表情は険しく、ぶつぶつ独り言を言っている。

そんなヘンなところがオカダの魅力だ。

オカダ・カズチカの沿革

オカダ・カズチカの沿革
  • 2002
    「登竜門」入門(15歳)

  • 2004
    メキシコでデビュー戦(16歳)

  • 2007
    「新日本プロレス」入団(20歳)

  • 2011
    「TNA(現インパクト)」へ海外修行(24歳)
  • 2011
    レインメーカー誕生(25歳)
  • 2012
    「CHAOS」加入(26歳)

オカダ・カズチカはプロレスゲーム『新日本プロレス 闘魂炎導 BRAVE SPIRITS』でプロレスを知る。そして、15歳で登竜門に入門。

15歳なんてまだ子供だ。まだ、カレーハンバーグが大好物の年齢である。当然、年末調整も経験がない。そして16歳にメキシコでデビュー戦を行う。

その後、2007年に新日本プロレスに入団。海外修行を経て、今の活躍っぷりに至る。

オカダの活躍の記録は、とてつもない。

IWGPヘビー級王座のベルト保持日数は720日。通算保持日数だと1789日。2012年に初戴冠してから、ほぼ5年間王者である。5年って小2の娘が小学校を卒業しているのよ。おかしいよ。そりゃチャンピオン感が体に染み付いてしまうわけだ。

保持期間歴代最長記録保持者。最多連続防衛記録保持者。最多通算防衛記録保持者。NEW JAPAN CUP 最年少優勝記録保持者。G1 CLIMAX 最年少優勝記録保持者。。。

とにかく漢字が多すぎる。中国語かと思った。

そして2012年のIWGP初戴冠以降、プロレス対象年間MVPは5回。年間最高試合賞は9回も受賞している。11年間で9回も受賞している。この11年間のプロレスの最高試合の81.8%がオカダ・カズチカの試合なのだ。レコード大賞でいえば、9年も西野カナが受賞しているってことになる。そんなことは起こるわけない。

アカデミー賞常連のメリル・ストリープですら3回しかアカデミー賞を受賞していない。やっぱりオカダは何かがぶっ飛んでる。これがレインメーカーショックだ。

オカダ・カズチカの楽しみ方

オカダ・カズチカには最強のフィニッシュホールド『レインメーカー』がある。食らったら最後、返せる人はほとんどいない。ヒットしたら試合は終了する。まさに必殺ワザ。

オカダが『レインメーカー』を仕掛けるとき、仁王立ちになって両手を広げる決めポーズがある。『レインメーカーポーズ』だ。

レインメーカーポーズがでると、カメラがロングショットになる。そして、会場も一気に盛り上がる。会場が盛り上がるもんだから、対戦相手も今から『レインメーカー』が来るって当然わかってしまう。だからほぼ避けられる

オカダ・カズチカの試合は、そこからが抜群に面白い。

レインメーカーを喰らうのか、避けれるのか。
その攻防がハラハラドキドキしちゃうのである。避けたら「おーー!」となるし、喰らったら「あーーー!」ってなる。喰らったのに返したら「ぬんおーーー!ドドドドド」ってなる。ああ、ボキャブラリーが欲しい。

もうひとつ、オカダ・カズチカの見どころは、試合後のバックステージコメント。

次の対戦相手のことなんか全く相手にしていない。「俺とやるのは早いでしょ。そんな甘くないでしょ」みたいなスタンスでずっと上から目線。

自分が次の対戦相手じゃないのに、イラッとする。次の対戦相手だったら腸が煮えくりかえるに違いない。でもその憎たらしい感じが、最強のボス感が出てたまらない。

インタビュアーが他の選手のことをどう思っているか聞くと、オカダは鼻で笑いながら「どうでもいいっす。興味ないっす。」と蔑みながら答える。もともとCHAOSはヒールだしね。

本当に憎たらしい。でも、それがすごくクセになる。
生意気で最強。会社のゴリ押し感も透けて見えてやや鼻につく。だからこそ、誰かがオカダに勝ったときは、最高の興奮状態になるのだ。