プロレス初心者がいちばん混乱するのがタッグマッチだ。
プロレスを布教するときに、いつもタッグマッチで質問がとんでくる。
「なんで二人で攻撃してるの? ずるくない?」
「え? なんで勝ったの!?」
一見するとタッグマッチはカオスそのもの。ただ、その奥にはしっかりとしたルールが隠れている。ルールさえ知れば、余計なことは考えずに済む。あとはレスラーたちの驚異的なパフォーマンスを堪能するだけだ。
今回は、あまり守られていないタッグのルールを解説していこう。そう、守られていないルール。
①リングで戦うのはひとり
タッグルールの基本。タッグマッチといえども、リング上で戦う権利があるのは一人だ。チームの誰かが代表して戦う。つまり、リング上では1対1の正々堂々とした戦いになる。たとえ、両軍が入り乱れていても、戦う権利があるのはチームで一人だ。誰に戦う権利があるのかを、観客も把握しておく必要がある。
②権利がある人をフォール、ギブアップさせれば勝ち
勝敗のルールは、シングルマッチと同じだ。
戦う権利がある人をフォール、またはギブアップさせればよい。しかし、タッグマッチではパートナーに危機が迫ると、仲間が「カット」に入ってくる。ギブアップしそうなとき、3カウントが入りそうなとき、相手の必殺技が出そうなとき。仲間の危機を救うために、パートナーが駆けつけカットする。なかなか技が決まらない。逆に相手のカットするのを、さらにカットすることもある。どういう展開になるか読めない。これがタッグマッチの醍醐味でもある。本当は反則だ。
③控え選手はコーナーのタッチロープ
コーナーで控えている選手は、タッチロープを握っていなければいけない。ウロウロしていてはいけないのだ。タッチロープとは、コーナーポストから垂れ下がっている45cm程度の紐のことである。この紐を握って待機しなければいけないのである。しかしながら、ほとんどの選手は握っていない。なんならタッチロープを使って相手の首を絞める選手までいる。もちろん反則だ。今、タッチロープの存在意義が問われている。
だが、ゲイブ選手はあんなに乱暴なのに、きっちりタッチロープを握っていたりする。プロレスへの愛を感じる瞬間だ。
④タッチで戦う権利をチェンジ
いくら超人のプロレスラーでも、一人で戦い続けると疲れる。そんなときは仲間とタッチをすれば、戦う権利が仲間に移る。タッグマッチのタッグマッチたる所以がこのルールだ。
仲間の選手のどこをタッチしても交代が成立する。交代したら速やかにリングを出ていき、選手交代となる。しかし、速やかに出ないで、ふたりで攻撃をしかけてから出ていくことが多々ある。二人がかりの攻撃はツープラトン攻撃と呼ばれている。本当は反則だ。
⑤二人がかりの技は反則
ツープラトン攻撃は、厳密には反則行為だ。しかし、プロレスは5カウントまでは反則OK。タッグマッチでしかみることのできないダイナミックな連携技が、戦いを大いに盛り上げる。これこそが、タッグマッチの真髄と言ってもいい。レフェリーも黙認している。
ただ、あまりに長時間のツープラトン攻撃は、レフェリーも黙っちゃいない。反則カウントを取られる。でも、毘沙門はずっとツープラトン攻撃しているのに、反則を取られない。日頃の行いがよいからかもしれない。レフェリーとの信頼関係の構築は大事ということだ。
まとめ
タッグマッチのルールはわかっただろうか?
残念ながらほとんど守られていない。基本的にずっと反則だ。
でも、そこがタッグマッチの面白いところだ。どこで誰が乱入をしてくるのか、ツープラトンの必殺技が決まるのか、カットされるのか。戦況が目まぐるしく変わる、先の展開が読めないところが、タッグマッチの面白さなのである。ルールなんかに囚われず、ただただ目の前の展開を楽しむのが正解だ。
それでは、素晴らしきプロレスライフを!