【2024年上半期】新日本プロレスは本当に暗黒期なのか? 観客動員数を調べてみた

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最近、SNSでちょこちょこ囁かれている「新日本プロレスは暗黒期だ」とか「観客動員数がガラガラヤバい」という噂。

2024年の上半期も終わったので、本当にヤバいのかを調査してみた。

集計は、観客動員数の集計方法が変わった2016年から観客動員数を集計。各年の上半期(1月〜6月まで)の観客動員数を集計し、2024年の新日本プロレスがどうなのかを検証してみたい。

上半期の観客動員数の推移

各年の上半期の観客動員数の推移がこちらのグラフだ。

新日本プロレスは2019年に過去最高の年間観客動員数約47万人を記録した。2016年の年間観客動員数が31万人なので、わずか4年間で1.5倍の観客動員数を伸ばしたこととなる。ちょっとスゴすぎる。しかし、そこでコロナが襲来する。

さて、上半期の観客動員数に注目してみよう。2019年までは驚異的な成長率を見せていた観客動員数も、2020年にはコロナで大打撃を受けた。しかし、2021年からは3年連続右肩上がりで復調し、2024年の上半期の観客動員数は、2016年を上回る結果となっている。つまり、4年後には2019年と同じ過去最高の観客動員数になっている可能性だって十分あるということだ。

このデータを見る限り、上半期の観客動員数は暗黒期を過ぎ去ったと言えるだろう。

一方で、「コロナ前に戻っていない」という声も聞こえる。しかし、新日本プロレスのコロナ前は過去最高の観客動員数を記録していた時期であり、それと同じ数値を比較するのはちょっと酷な話だ。

ただ、同じくコロナで大打撃を受けているプロ野球業界は、2024年に過去最高の観客動員数になるかもしれず、プロレス界にもっと盛り上がりが必要だということは間違いない。それにしても、毎回、ドームを90%埋める野球って超強力・・・

プロ野球「観客動員」過去最高になるかもしれない コロナから回復、動員率が9割を超える球団も(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
■スポンサー収入が大きな収益の柱に  かつて、プロ野球の最大の収入源は「テレビの放映権」だった。高い視聴率を稼いだ巨人戦の放映権で、プロ野球は回っていた。しかし今や、プロ野球にとってスポンサー収入

上半期の平均観客動員数

次に、上半期の平均観客動員数を見てみたいと思う。

平均観客動員数の傾向も、大きくは変わらない。

違う点としては、2020年に平均観客動員数が大きく伸びている点だ。これは年始に行われたドーム2連戦で7万人を動員し、その後コロナの影響で2月26日を最後に有観客の大会が開催されなかったためだ。その結果、平均が大きく伸びている。

2021年以降、平均観客動員数は右肩上がりで増加しているが、その伸び率はやや鈍化している。それでも2024年の平均観客動員数は、2016年を超えているため、平均観客動員数の面でも暗黒期は脱していると言えるだろう。

後楽園ホールの平均観客動員数

「後楽園ホールが埋まらなくなってきているじゃないか」という声もたまに聞く。そこで、後楽園ホールのみの平均観客動員数も見てみよう。

2021年以降は、後楽園ホールの観客動員数も回復しているようだ。平均観客動員数は3年連続で増加中だ。

しかし、2016年から2020年の平均観客動員数が約1500人であり、これはほぼ毎回満員ということを意味している。毎回満員ですって! それに対し、2024年は後楽園ホールの平均観客動員数が1,269人で、満員になることは少ない。コロナ前の熱狂的な後楽園ホールの雰囲気にはまだ戻っていないのは確かだ。

それでも、徐々に観客動員数が回復しているのはよい兆候だ。再び熱狂のプロレスの聖地を取り戻す日はそう遠くないかもしれない。なるべく後楽園ホールには参戦しようと思う。でも、平日2連戦とかが多いんだよなあ。2日連続で早退とかやりづらい問題もあるし。

地方の平均観客動員数

「地方大会での空席が目立つようになっている」という意見もチラチラ見かける。確かにそんな気もしなくもない。こちらも気になったので「東京、アメリカ以外」の平均観客動員数を見てみよう。

大阪城ホールとか、PayPayドームを地方と呼んでいいのかという問題もあるし、エスフォルタアリーナ八王子は地方ではないのかという疑問もあるが、ややこしいので東京・アメリカ以外を地方大会として集計してみた。

地方大会については、2021年を底辺としてやや伸び悩んでいるようだ。ただし、2022年はPayPayドームでの8000人越えの大会があり、これが平均値を大きく押し上げている。そのため、平均観客動員数が多く見える。博多の大会を除くと、地方大会でも3年連続で平均観客動員数はわずかに右肩上がりとはなる。

それでも、地方大会では苦戦を強いられている状況は間違いなさそうである。ただし、観客動員数が減少しているわけではないので、2024年が地方大会の暗黒期であるということもなさそうだ。

オーカーン選手の地方再生戦略に期待するしかない。

ちなみに、直近でガラガラと言われていた「かみす防災アリーナ」を調査してみた。もしや神栖市の人口が少ないんじゃ? だって田舎っぽい名前だし。2024年の上半期最後のシリーズ「NEW JAPAN SOUL」の都市の人口と観客動員数の比率を調査してみた。

日付会場都市人口(万人)観客数人口比
24.6.16北海きたえーる札幌市195.22,3700.12%
24.6.18青森県武道館弘前市17.741,0860.61%
24.6.19岩手県営体育館盛岡市29.761,0080.34%
24.6.22福島トヨタクラウンアリーナ福島市29.421,0710.36%
24.6.23かみす防災アリーナ神栖市9.547700.81%

やっぱり! 神栖市の人口が少ない。人口比率で言えば、むしろ神栖市が0.81%でいちばん貢献している。これはこれでフェアじゃない気がするが、神栖がいちばん集客しているということだ。むしろ、人口比で考えると「北海きたえーる」での集客がもっと欲しいところだ。

一体この数字がなんの意味があるかわからないが、そんな結果となった。

東京大会の割合

暗黒期がどうとかとはもはや関係ないけど、そもそも東京の大会数の割合ってどうなっているのだろうと気になってきたので、調査してみた。

大会数東京大会数地方大会数東京割合
201678245430.8%
201783315237.3%
201887315635.6%
201990276330.0%
202035142140.0%
202181404149.4%
202272274537.5%
202377195824.7%
202478225628.2%

どうやら2023年と2024年の上半期には、東京での試合の割合が減少しているようだ。観客動員数だけを考えると、平均観客動員数の多い都内での大会を増やす方が効果的に見えるが、ここ数年は地方での試合の割合を増やしている。

これは、新日本プロレスの木谷オーナーが掲げる「グローバルを目指しながらも、日本のローカルを大切にする」という”グローカル”戦略の一環だ。この戦略は、海外展開を視野に入れつつも国内の地方都市のファンを大切にするというものである。

地方での試合を増やすことで、全国各地のファンに直接プロレスを楽しんでもらう機会を提供し、新たなファン層を獲得する狙いがある。また、地方大会の観客動員数が徐々に回復していることからも、この戦略が一定の成果を上げていると言えるだろう。

やっぱり配信で見るのと、生観戦するのは100倍くらい違うので、ぜひ近くで大会があった際は観戦しに行ってもらいたい。

まとめ

結論として、新日本プロレスは観客動員数の面では暗黒期ではない。地方も東京も、全ての面で改善傾向にあり、暗黒期ではなさそうだ。新日本の暗黒期は2021年であり、黄金期は2019年だ。

レスラーやオーナーが「このままじゃいけない」という発言をするようになり、新日本プロレスの観客動員数が減ってきているのかと思ったが、実際にはそうではない。ただし、コロナ前の黄金期にはまだまだまだ遠い。コロナ前の大観衆を体験している人たちにとっては、今の状況は長い目で見て暗黒期に映るのかもしれない。

ということで新日本プロレスはコロナ禍からずっと右肩上がりなので安心していただきたい。我々ファンもプロレス界が盛り上がるようにポジティブな発信をしていくことが大切だ。ファン同士で罵り合っている場合じゃない。まだ観戦未経験の方は、ぜひとも会場に足を運んでみてほしい。ただただ、でかいレスラーがいるっていうだけで感動するはずだ。

それでは、素晴らしきプロレスライフを!