2024年4月27日、横浜アリーナ。
この日、「中野たむ vs 上谷沙弥」のどちらかがレスラーを引退する。
夢を叫び、涙でリングを染めてきた中野たむ。
ユニットを失い、全てを賭けて悪の道を切り拓いた上谷沙弥。
何度も交わり、ぶつかり、すれ違ってきた2人がついに、「引退」を賭けてリングに立つ。
勝てば生き残る。負ければ去る。
そんな非情すぎるルールのもとで、彼女たちは何を想い、何を背負って戦うのか?
この記事では、過去の対戦データ・勝率・大会実績などをもとに、
2人の歴史を紐解きながら、この運命の一戦の重みを徹底的に分析する。
数字で見えてくること。数字では語れないもの。
すべてが、この試合に詰まっている──。
徹底比較!プロフィール
2人に共通する原点――それは「アイドルを夢見た少女時代」。
中野たむは、癒し系アイドルユニット「カタモミ女子」の1期生として活動しながら。
一方、上谷沙弥はEXILEのバックダンサーとして輝き、さらにバイトAKBとして合格を果たし、王道の芸能街道を目指していた。
そんな2人の人生が交錯したのは、まさに運命だったのかもしれない。
中野たむがプロデュースを務めた「スターダム★アイドルズ」。そこでたむは、上谷にプロレスの世界への扉を開いた。
そのスカウトこそが、上谷沙弥が“スターダム練習生”となるきっかけだったのだ。
少し興味深いのは、2人のデビュー戦の相手が、それぞれ現在のユニットの仲間であること。
たむのデビュー戦は安納さおり、上谷のデビュー戦は渡辺桃。今やタッグを組む存在になっている。
そして、どうでもいいけど2人ともAB型。
2人が見せる二面性は血液型にも影響があるのかもしれない。
中野 たむ | 上谷 沙弥 | |
---|---|---|
キャッチコピー | 輝くスターダムドリーム | Phenex Queen |
ユニット | COSMIC ANGELS | H.A.T.E. |
生年月日 | 1988/3/22 | 1996/11/28 |
年齢 | 37 才 | 28 才 |
出身地 | 愛知県 | 神奈川県 |
デビュー | 2016/7/18 | 2019/8/10 |
デビュー相手 | vs 安納サオリ | vs 渡辺桃 |
キャリア | 8年目 | 5年目 |
身長 | 157 cm | 168 cm |
体重 | 50 kg | 58 kg |
血液型 | AB型 | AB型 |
徹底比較!レスラースペック
中野たむは、感情を武器にするレスラー。
泣いて、叫んで、抱きしめて、そして勝つ。
やられて、やられて、ボロボロになっても立ち上がり、喰らいつく。
その姿はまさに、“情念の化身”。
一方の上谷沙弥は、まさに”身体能力の化身”。
長身から繰り出されるスピード、飛び技、そしてスプラッシュの美しさは圧巻。正統派の優等生だった。
だが、H.A.T.E加入後――その姿は一変した。
ドロドロとした感情をむき出しにし、表情ひとつ、視線ひとつに深みが宿るようになった。
華麗さに、狂気と激情が加わった“感情型チャンピオン”へと変貌を遂げた。
いまや、上谷沙弥はスターダムの顔とも言える存在。
地上波放送でも人気が爆発。SNSでもトレンド入りをし”スターダムの顔”として存在感を放っている。
勢い、注目度、実力――どれをとっても、今もっとも“旬”な選手である。
華麗な技に、感情もまでを手に入れた新たな女王に、中野たむがどう挑むのか。
絶体絶命こそ中野たむの見せ場である。
徹底比較!シングルマッチ勝率
中野 たむ | 上谷 沙弥 | |
---|---|---|
シングル試合数 | 143 | 110 |
シングル勝利数 | 76 | 60 |
シングル勝率 | 53.1% | 54.5% |
メインイベント数 | 30 | 19 |
メインイベント率 | 21% | 17.3% |
タイトルマッチ回数 | 24 | 29 |
総試合時間 | 27:52:37 | 22:33:43 |
平均試合時間 | 0:11:41 | 0:12:18 |
シングルマッチの勝率推移
シングルマッチのメインイベント率の推移
シングルマッチの勝率で見ると、わずかに上谷沙弥が中野たむを上回っている。
とはいえ、両者の数値はほぼ互角と言えるレベルにあり、大きな差ではない。
勝率の推移を振り返ると、中野たむは2021年をピークに、以降はやや緩やかな下降傾向を見せている。一方、上谷沙弥は2022年にシンデレラ・トーナメントを制したことで勝率を大きく伸ばしたが、その後はやや伸び悩む時期もあった。
しかし、H.A.T.Eへの加入をきっかけに再び覚醒。2025年に入ってからは、シングルマッチで7戦全勝・勝率100%(2025年4月現在)という圧倒的な成績を記録している。
また、メインイベントへの起用数では、中野たむが通算30戦と経験値で大きくリード。
彼女が長年スターダムの中心で活躍してきた実績が、この数字に表れている。
とはいえ、2025年に限って見ると、上谷沙弥はすべてのシングルマッチがメインイベントとなっており、現チャンピオンとしての存在感と信頼の高さが伺える。
中野 たむ vs 上谷 沙弥 対戦成績
中野 たむ | VS | 上谷 沙弥 |
---|---|---|
3 win | 0draw | 7 win |
2019.10.14 | ||
0:09:23バックスピンキック | ||
2020.9.12 『5★STAR GP』 | ||
0:11:06首固め | ||
2021.4.10 『CINDERELLA TOURNAMENT』 | ||
0:05:48オーバー・ザ・トップロープ | ||
2021.7.4 ワンダー・オブ・スターダム王座 | ||
0:22:27トワイライトドリーム | ||
2021.8.8 『5★STAR GP』 | ||
0:13:18フランケンシュタイナー | ||
2021.12.29 ワンダー・オブ・スターダム王座 | ||
0:21:59フェニックス・スプラッシュ | ||
2022.3.27 ワンダー・オブ・スターダム王座 | ||
0:23:10片エビ固め | ||
2023.7.23 『5★STAR GP』 | ||
0:08:15レフェリーストップ | ||
2024.12.29 ワールド・オブ・スターダム王座 | ||
0:21:29旋回式スタークラッシャー | ||
2025.3.3 | ||
0:25:39カミゴェ式ビッグブーツ |
これまでのシングルマッチの直接対決は、上谷沙弥の7勝3敗と、数字だけ見れば上谷の圧勝。
特に近年は、たむがまったく勝てていない状況が続いている。
注目すべきは、2023.7.23の『5★STAR GP』公式戦。
この試合は上谷が途中で負傷し、無念のレフェリーストップとなったため、勝敗こそつかなかったものの、たむにとって“流れを変えるチャンス”だった。
しかし、流れは変えられず直近の対戦結果でレフェリーストップを除くと、上谷が5連勝中。
中野たむが最後にフォールを奪ったのは、2021.7.4まで遡らなければならない。
この4年近い「勝てない期間」は、たむにとって確かな“壁”として存在している。
中野 たむ vs 上谷 沙弥 のベストバウト
中野たむ vs 上谷沙弥――
その“ベストバウト”として多くのファンの記憶に新しいのが、2025年3月31日・後楽園ホールで行われた「敗者スターダム退団マッチ」だ。
この試合は、まさに感情と技術、覚悟がぶつかり合う死闘となり、YouTubeでの無料公開も相まって、大きな話題を呼んだ。
勝利したのは上谷沙弥。
しかし、試合直後――その場にいた全員が涙を流し、たむの退団を見送る…かと思われたそのとき。上谷がマイクを手に取り、「これで終わりでいいのか?」と問いかけ、たむを呼び止めた。
その結果、2人は4月27日・横浜アリーナで、今度はお互いに引退を賭けて対峙することが決定。
この急展開に、ネット上は混乱。大きな議論を巻き起こすこととなる。
「退団すると思って後楽園行ったのに詐欺だろ?」「横浜アリーナの宣伝かよ!?」など、ファンの間では炎上状態にまで発展した。
そして翌日、事態はさらに動く。中野たむは正式にスターダム退団を発表。
以後は“フリーランス”としてスターダムのリングに上がることとなり、その立場で横浜アリーナ決戦に臨むことになった。
▼中野 たむ vs 上谷 沙弥
2025.3.3 後楽園ホール 負けたら退団マッチ
まとめ
アイドルを夢見た少女たちが、プロレスというリングで出会い、宿命のライバルとなった。
感情を爆発させて闘う中野たむ。華麗さと強さを手に入れた上谷沙弥。
数々の名勝負、勝敗の偏り、交錯する感情、すべてを経て、たどり着いたのが――引退を懸けた横浜アリーナの最終決戦。
プロレスなんてやるつもりじゃなかった2人が、全てをプロレスに捧げてトップ選手となった。しかし、勝者はプロレス人生を続け、敗者はリングを去ることとなる。
2024年4月27日、横浜アリーナ。
その瞬間を、私たちは決して見逃してはいけない。
それでは、一緒に素晴らしきプロレスライフを!